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書評、映画・音楽評など。

梶原しげる『即答するバカ』新潮新書、2010年

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 2010年8月11日(水)に紀伊國屋書店梅田本店で購入し、同日読み始め翌日読み終える。題名と「はじめに」の冒頭では文字通り「即答するバカ」について書いてあるのに、中身は著者の経験を自慢げに、しかし謙遜という蓑に隠しながら書かれた自伝のようなもの。たしかに家に帰って読んでみると「はじめに」の最後の2段落では次のように書いてあった。

 よほどの緊急事態を除けば、日常生活において、即答しないやつは、バカだ、失礼だ、と言われる場面はあまりない。だから「即答する前に、ちょっと言い方を考えてみたら」と私なりの考えをまとめてみたのが本書である。第1章は、参考にしたい様々な話し方、第2章はちょっと気になる口のきき方についてまとめたもの、という構成になっている。一冊丸ごと「即答するバカ」をこき下ろすような内容を期待されても困るので、あらかじめお断りしておく(そんな本、生産的じゃないでしょう?)。

 「おっさんの話なんか聞くのは無理!」と即答せずに、おつきあいいただければ幸いである。

 「断るんだったら最初の最初に断っておけよ」と言いたくなるが、そうすると「即答するバカ」という題名のインパクトが薄れてしまうし、おそらくわたしはこの本を買わなかっただろう。著者の求める情報にこういうところで「即答しない」ことに腹立たしさすら覚えてくるが、それが商業主義というものであって腹を立てても仕方がないのだと自分を抑える。それとも「はじめに」ぐらいは最後まで読んでから買うべきだったのだろうか。あるいは新書にそこまで期待するのは間違っていて、内容に満足できなければ途中で読むのをやめる技術を身につけるべきなのだろうか。おそらくどちらも言えるような気がする。本を買うときにある程度時間があれば、「はじめに」と本文の一部ぐらいはぱらぱらと目を通してじっくり品定めすればいいし、そうでなければざっくり買ってきて満足できなければ読むのをやめて次の本に移ればいいのだろう。

 ざっくりこき下ろしたけど、インタビューの仕方について書かれた61-4頁と、目上の人のほめ方について書かれた127-30頁は共感できるところが多かった。

小林啓倫『AR―拡張現実』マイコミ新書、2010年

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 2010年8月8日(日)にブックファースト淀屋橋店で購入。同日読み始め、翌日読み終える。

 ARの発想そのものは、著者も書いているように決して新しいものではない。そういう意味では本書を読むことで新しい発見はなかったが、ARの実例を数多く紹介してくれている点でたいへん読み応えがあった。

 わたしは「頭のなかで考えていることをそっくりそのままボウルのなかにひっくり返し、自分も含め誰もがそれを確認できるようにしてくれるツール」[8月6日のtweetより](を実現するためのもの)として、AR(いみじくも筆者が指摘しているように、仮想世界と現実世界の相互作用および両者と人間の相互作用)による情報の集約・拡散・連結、コミュニケーションの変容、ブレスト、および演劇ワークショップなどを絡めたものを考えているのだが、それを実現するためには技術だけでなく(コンテンツの)デザインが不可欠だと考えている。そのため筆者がAR三兄弟(の長男・川田十夢)を引きながら次のように論じている箇所には特に共感を覚えた。

 このように、「拡張現実」という概念は、何も高度な技術が使われていなければならないというものではない。確かに技術の側面も大切なのだが、そればかりにとらわれていると、逆に「ARのためのAR」を生み出してしまう結果になるだろう。

 むしろ「どのような空間を生み出したいのか」「そのためには何を『拡張』すればいいのか」というゴールから逆算する姿勢が求められるはずだ。そして成功しているARの活用例には、少なからずそのような姿勢が感じられるというのが私の感想である。

 その意味で、ARの世界で求められるのは、決して技術者ばかりではないだろう。逆に今回取材させていただいた方々の中には、「技術者の発想は定型化されてしまっていて面白くない」というような指摘をされる方が少なくなかった。また、AR三兄弟の長男・川田十夢氏はこんなことを語っている。

「劇団には面白いことをやっている人たちが大勢います。劇団も『場所』にルールを持ち込んで何かをやるという点では(AR三兄弟が取り組んでいる活動と)一緒ですよね。彼らは空間にルールを持ち込むプロ。いろいろな気付きがあります」[上掲書、196-7頁]

奥村倫弘『ヤフー・トピックスの作り方』光文社新書、2010年

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 2010年7月30日(金)に阪大生協書籍部豊中店で15%オフで購入。2010年8月1日(日)に読み始め、同日読み終える。

 そもそも「ヤフー・トピックス」というのがどのようなものなのかも知らず、勝手に”iGoogle”のようなものだろうと早合点して買ってしまったのだが、最初の数頁を読んでそうではないことに気づきがっかりしながら読み始めた。せっかく読み始めたので一応最後まで読んでみたけど、特に目からうろこが落ちるというようなものでもなかった。ただし第3章「コソボは独立しなかった」については、日本人の海外のニュースへの関心の低さを裏づけてくれるようなデータが掲載されており、また筆者の編集者(あるいは元ジャーナリスト?)としての苦悩が最も強く表れており読み返したいと思った章である。

前川孝雄『勉強会に1万円払うなら、上司と3回飲みなさい』光文社新書、2010年

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 2010年7月30日(金)に阪大生協書籍部豊中店で15%オフで購入。2010年8月1日(日)に読み始め、同日読み終える。

 本書のなかで著者が何度も精神論を語っているのではないと否定しているが(否定されると余計怪しむし、そもそもこういう系統の〔自己啓発〕本では精神論ではないと否定するところから始まるのが読んでいてなんともせつなくなってくる)、紛れもない精神論。私自身は少なからず精神論的な生き方をしているため著者の主張に全く共感できないわけではないが、この本が大学在学中で就職活動をしている20代や入社して10年ぐらいまでの若手社員を主な対象として書いているのだとすると、著者の主張に共感して説得される人はそんなに多くないだろう。

 人にもよるけど、少なくとも私自身の率直な感想としては、著者のような部下が同じ職場にいたら職場が活気づくというよりむしろ鬱陶しいだろうなと感じた。この印象をもう少し言語化すると、私を含め最近ではガツガツした人が苦手という人が増えているんじゃないだろうかということになるかもしれない。それは著者自身が批判するような人間像でもあるのだが、結局のところ、与えられた仕事をそつなくただ淡々とこなすこと(これを著者は「仕事」ではなく「作業」と呼んでいるが)で評価されるような環境でいまの若者が育ってきたからなのかもしれない。

 もうひとつおもしろかったのは、128-31頁「あなたの仕事はなんですか?」に書いてあることが、今朝から同時並行して読んでいる

と正反対のことであるという点。この点については後ほど書き足す予定。