小寺信良『USTREAMがメディアを変える』ちくま新書、2010年

 阪大生協書籍部豊中店にて2010年11月16日(火)に15%オフにて購入。11月27日(土)に読了。いつ読み始めたのかは例によって覚えていないけど、1週間ほどかけて読んだと思う。読みものとしてなかなかおもしろかった。

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 ユーストリーム上の「ドミューン(DOMMUNE)」という放送をもとに論じられた次の箇所は興味深い。

 これまで日本では、違法性があるというのであれば事業化しなかったものだが、米国では事情が違っていた。可能性があるビジネスであれば、法を改正して違法にならないようにする、という動きをする。また、違法であったとしても、やってしまってビジネスモデルを作り、関係者への和解金支払いで解決する例もある。特にスピードが勝負のネットビジネスにおいては、このような米国型のスタイルは強い。

 このような米国の動き、そして実際に米国初のビジネスが日本に退去して押し寄せてきた現状に、日本でも「ルールは現状に合うように変えるべき」という動きがでてきた。ドミューンはその先鋒となるサービスとなるかもしれない。(125-6頁)

 「ドミューン(DOMMUNE)」ではDJプレイを通じて楽曲を使用しており、作詞・作曲家などへはJASRACなどの管理団体を通じて(といってもその仕組みやプロセスに多くの疑問が投げかけられていることは周知の事実であるが)著作権料を支払っているものの、著作隣接権の一つである原盤権をもつレコード製作者へは必要な使用料を支払っていないという。支払うつもりはあるものの、それを引き受けてくれる管理団体がないために楽曲を無断使用している状態が続いているのだそうである。

 「テレビ番組は誰が作っているのか?」(160-3頁)で述べられている内製率については、去年NHKで聞いたのと同じ内容。「テレビ産業の疲弊」(165-7頁)の内容とあわせて考えると深刻な問題である。

 「コピー制限がテレビ視聴文化を壊した」(178-81頁)というのはまさにその通り。

 NHKオンデマンドに関する認可基準が日本におけるテレビ番組のオンデマンドサービスの発展を阻害する原因になっていたというのは知らなかった。(182頁)

 慣習的に肖像権の許諾は、全員に書面で許諾を取る必要はなく、来場者全員に「カメラに写り、配信される可能性がある」ということを口頭で周知する程度で済んでいる。どうしても写りたくないという人がいる場合は、写る可能性がない位置、たとえばカメラのうしろ側などへ移動してもらうことが妥当で、それを理由に退場させるという処置は望ましくない。(196-7頁)

 なるほど。

 現在ネットで話題になった放送の文字起こしを行っているのが、「書き起こし.com」(http://www.kakiokosi.com)である。書き起こし作業はボランティアベースで行われているようだが、元々文字起こし作業というのは、出版業界においてはインタビューをテキスト化するなどの用途が多いため、専門業者も多く存在する。(209頁)

 これは気になる。このあとで著者は書き起こしの許諾権や発言の著作権等について論じている。そこらへんの法整備もきちんとしないといけないのだろうが、これまでの経験上そういうことはあまり期待できそうもない。

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